復興のモデル

復興のヒストリー」で見てきた通り、関東大震災を機に大規模災害における“復興”の重要性が認識されてきましたが、阪神・淡路大震災が起こる前までというのは、都市計画に則って市街地を再生する【都市再建】が“復興”そのものだと考えられていました。住宅の再建はもちろんのこと、道路や港湾などの社会基盤の復旧及び公園などの都市計画を含めた“目に見える風景の変化”のみが重要視されてきたのです。
ところが、経済活動を担う大都市を襲った阪神・淡路大震災では、社会基盤を復旧しただけではまちの活気が戻らないことは明白であり、復興のプロセスとして【経済再建】の重要性が認識されました。
また、まちの被災規模だけでなく、被災関係者の数が膨大だったことから新たに「人間復興」という言葉が生まれ、被災者自身の暮らしを立て直す【生活再建】が第3の復興目標に掲げられました。ハード面だけではなく、初めて「被災者視点」というソフト面からの復興が考慮されたのです。

復興3層モデル

このように【都市再建】【経済再建】【生活再建】の3つを達成すべき目標とし、その復興過程を構造化したものを『復興3層モデル』と呼びます。復興の基盤となる第1層は、【都市再建】の根幹である「社会基盤の復旧」です。これがすべての復興活動の出発点です。社会基盤が機能を回復することが出発点となって、3つの復興目標の達成を目指した活動が本格化します。

3つの復興目標の達成は、すべて同時並行で進んでいきますが、そこには「目的と手段の関係」が存在しています。例えば、被災者の【生活再建】を実現するためには、住まいと収入が必要であり、そのためには地域全体での【都市再建】と【経済再建】が求められます。また、【経済再建】【都市再建】を実現するためには、「社会基盤の復旧」が成し遂げられていなければなりません。

阪神・淡路大震災では、「社会基盤の復旧」には発災から2年。【都市再建】のうち「住宅再建」は5年で完了しましたが、「都市計画」の実現には10年の歳月を要しました。【経済再建】にあたる「経済の活性化」や「中小企業対策」には、当時の日本の経済的な停滞も影響して10年では完了せず、そのため【生活再建】も10年の時点では「8割復興」にとどまりました。下2層が実現されない限り、3層目の【生活再建】が達成されることは難しいのです。目的と手段の関係を構造化したこの復興モデルは、復興政策を実行していく上で非常に重要なものといえます。

次のトピックスへ