復興のニーズ

復興のモデル」で紹介したように、阪神・淡路大震災では【都市再建】【経済再建】に加え、被災者自身の【生活再建】が初めて復興の目標として掲げられました。しかし、失ったまち並みを修復する都市再建や、停滞した経済活動の活性化とは異なり、多様な被災者ニーズが基礎となる生活再建においては、「何をもって生活再建とするか」という共通項の設定はとても難しい作業となります。そこで、生活再建に必要な“要素”を探るため、震災から5年目に神戸市の震災検証の一環として『生活再建ワークショップ』が実施されました。

生活再建7要素

このワークショップは、生活再建の主役である被災者と支援者たちを対象に、計12回に分けて行われました。全体を通して集められた現場の声の総数は1,623。分類した結果、生活再建に必要な要素が7つに集約されることがわかりました。

その中で圧倒的多数を占めたのは、【すまい】の再建と【人と人とのつながり】の確保で、2つを合わせると全体の“過半数”を超えています。生活再建の土台となる【すまい】の重要性に関してはこれ以前にも認識されていましたが、【人と人とのつながり】がそれと同等の重要性を持っていたことは、新たな発見でした。つまり、被災者にとって【すまい】を失うということは、避難所や仮設住宅、公営住宅などに次々に移り住むことを意味し、その度にそれまでの人間関係が失われ、また初めから【人と人とのつながり】を再構築しなければならなかった現状が浮き彫りになったのです。
これら2つの要素を筆頭に、【まち】の再建や【こころとからだ】の健康、次の災害に向けた【そなえ】への必要性や、収入などの【くらしむき】の安定、【行政とのかかわり】を良好にするといった全部で7つの要素に集約されました。

この『生活再建7要素』は、大きく4つに分類することができます。災害に固有の要素と他の人生の危機にも共通すると考えられる要素です。二度と同じような災害経験をしたくないとの気持ちが【そなえ】の充実を生みます。これが災害固有の要素です。残りの6つの要素は共通要素で、そのうち【まち】の再建や【行政とのかかわり】は、どのようなサービスが期待できる社会に自分が暮らしているのかという「社会的な生活基盤」に関連するものと考えられます。また、【くらしむき】や【すまい】は、日々の暮らしを支える「個人的な生活基盤」に属し、【こころとからだ】【人と人とのつながり】は、心身を健やかにする「個人的な財産」に分類されます。これらは、どれかひとつの要素に偏るのではなくバランスよく存在していることによって、「災害からの回復力」の要素として機能を果たします。

生活復興感

生活再建の実現のためには、上記の7つはすべて必要な要素となりますが、「住宅の復旧率(すまい)」や「経済指標の向上(くらしむき)」など、マクロな指標だけでは被災者一人ひとりの復興度合いを測ることはできません。そこで、「被災者の復興に対する実感(=生活復興感)」を高める要因を探るため、7要素の相関関係を紐解く『生活復興モデル』の分析が行われました。

分析の結果、生活復興感の高まりには【震災の影響度】と【震災体験の評価】の大きく2つのチカラが働いていることがわかりました。つまり、【震災の影響度】=「自分はもう震災の影響を受けていない」/【震災体験の評価】=「この震災体験には意味があった」というような意識の醸成が「生活復興感」を高めることになります。

具体的には、7要素の中で「すまい」「くらしむき」「こころとからだ」の3つの要素が安定することによって【震災の影響度】が緩和されます。また、「人と人とのつながり」が「まち」の地域活動への参加を促し、その結果【震災体験の評価】が高まるといった相関関係が存在していました。

注目すべき点は、「人と人とのつながり」のより具体的な中身です。確かに、地域活動への参加によってさまざまな“他者と出会い”、人間関係は構築されていきますが、大事なことは「この人と出会えてよかった」と思えるような【重要他者との出会い】が必要となります。なぜなら、家族や友人を失った人にとっては、災害前と同じ状態に戻る“復旧”はありえません。このような被災者にとって、不条理な被災体験に意味を見出すことのできる【重要他者との出会い】があって、初めて震災体験を評価することが可能となるのです。つまり、被災者にとっての復興とは、「人生の再構築」という意味合いを持っているといえます。

次のトピックスへ